円空仏のほほえみ

飛騨高山での研修において私の(研修以外での)楽しみの1つは、「円空仏」に出会うことでした。

江戸時代初期、美濃の国に生まれた円空上人は、生涯12万体に及ぶ仏像を彫ったと伝わっています。

長良川の水害で幼少期に母を失った円空は、母の菩提を弔うため仏像を彫り始めるのですが、途中から、人々を救済するためという目的に変わっていったそうです。

私は手塚治虫さんの漫画『火の鳥~鳳凰編』の主人公の一人、仏師「我王」に通じるものを感じます。

これもご縁と言うべきで、私が研修で訪問した「千光寺」は円空が一時期、仏像制作の拠点として過ごした古刹です。また数多くの円空仏が寺宝として大切に保管されており、実際に目にすることでができた事は、本当に感慨深いものでした。

浅学な私が我流の解釈をするのもおこがましいところですが、円空仏の魅力といえば、なんといってもその素朴な微笑にあると思います。円空は、自ら彫り上げる仏の微笑の中に、自らの母の姿を見たのかもしれません。

また今回の飛騨高山を訪れた中で、円空彫を極めた仏師故三輪年朗氏の「円空洞」を訪れることができました。
現在では、三輪氏の娘さんが切り盛りされておられ、また円空彫は三輪氏のお弟子さんへと(もちろん大量生産と言うわけにはいきませんが)現代においても受け継がれています。

私は、矜羯羅童子と善財童子の像を購入させていただきました。

もちろん円空その人が彫り上げたものではありませんし、三輪年朗氏が彫り上げたものでもありませんが、それでもなおかつこの仏像のその慈愛に満ちた微笑みを眺めるにつけ、自らの両親への恩の思いを新たにしないわけにはいかないのです。

我を生じ我を育するは父母の恩、高天よりも高く、厚地よりも厚し。
身を粉にして命を損じても、何ぞ却って報ずることを得ん。

(あなたを生んで育てた父母の恩は、天よりも高く、地よりも深い。
その恩はどんなことをしても報いることが出来ないほど尊いものです。)

弘法大師『教王経開題』川辺秀美翻訳