
人生は地獄よりも地獄的である
芥川龍之介
先日、芥川龍之介著の『地獄変』を読みました。
自らの、芸術を完成させるために、血を分けた最愛のわが娘が焼き殺される中でも、自らの芸術を優先させる、主人公の絵師良秀の危機迫るその形相が、文脈からも伝わってきて、背筋の凍るような作品でした。
次いで、1969年製作の中村錦之助・仲代達也主演の映画『地獄変』も鑑賞しました。
小説との大きな違いは、仲代達也扮する良秀が、中村錦之介(萬屋錦之介)扮する「大殿」が、だまし討ちのように良秀の愛娘を焼き殺す様を良英に見せつけると言うシーンにおいて、良秀は、当初頑なに抵抗する家族愛が芸術的欲望に変化していくという心理描写でした。

世の中には、自分の道を極めたいと思っている人も多くいることでしょう。
しかし、その手段としてある一部の人は、「人としての道」を踏み外す事もあるかもしれません。
いかにして、「我が道」と「人の道」の折り合いをつけるかは、場合によっては大きな人生の岐路となります。
この道よりわれを生かす道なし。この道を歩く。
武者小路実篤
家庭を持つ人の多くは、自分の道よりも家族を優先とさせ、自身の夢を捨てざるを得ない場合も多いと思います。「犠牲を顧みず、我が道を歩み続ける」ことができるのは、とても恵まれていることなのかもしれません。
自分自身が決心した事を迷わず歩み続ける事はそれは尊いことです。しかし一方で家族の為や、人のために自分自身の道を捨てること。それもまた尊いことだと思います。